まるいカケラ#002

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 真紀が日本を出て半年が経とうとしていた。そして、僕のマンションに突然手紙が届いた。

 真樹へ。私は今チェコにいます。日本では触れ合うことができなかった心に触れる日々。決して何かはっきりとした目標があるわけでもないし、私が描いていたライフスタイルに向かって前進しているというリアリティーとは程遠い日々を過ごしています。けれど、日本でのあの落ち込む感覚は微塵もありません。充実しているというわけでもありませんが、全てがフラットな上で大地を自分の足が踏みしめている実感に満ち溢れています。イタリアで始まった暮らしの中で、たった一人の生活で何が見えたと思いますか?最初は不安でいっぱいだった心の中が、新しい朝を迎えるたびに少しづつ自分になれる感覚。生まれた国を出て言葉も文化も違う国で、なぜか、自分が見えてきました。不思議な感覚といえば不思議ですが、新しい自分を発見できたと言いたいところですが、そんなフワフワした気持ちではありません。霞が晴れる感覚でした。今週は仕事をさせていただいている工房の仲間たちと小旅行でチェコに来ています。
 泊まっていたホテルの近くで週末に行われていたフリーマーケットでの一枚です。チェコ名物のリキュールワッフル(ウエハース)を買っているところです。そのまま1切れずつで売っていて、歩きながら食べれるのです。なんと2コルナ(←チェコの通貨です)!約14円。まさにその手に2コルナ握り締めているところ。観光地のみやげもの屋やデパートでは、高すぎて馬鹿らしいのと(お店によって、同じものでも価格が全然違うのです)大しておもしろいものにも出会えず何も買えなかったのですが、やっとここに来て、安心して存分に楽しいお買い物出来たっていう瞬間です。
 お仕事は順調ですか?いい会社に出会えましたか?まだ、私はこちらでパソコンを買うことができませんが、いずれ、ちょっと頑張って買うつもり。そしたらもっと真樹に連絡をします。今日まで連絡できなかったことはごめん。でも、私は元気です。真紀

「やれやれ、真紀、変わってねえの。仕事の事を書けって~の。」電車は会社のある最寄り駅に着いた。いつもの朝。「まぁ、貧乏そうだし、なんかここに送ってやるか・・・」真樹は改札を出て今日も人ごみに滑り込んだ。

Special thanks:hime
Mariin-Film Blog