よくあるご質問#001

 よく、「毎日どんな仕事をしているんですか?」と質問されることがある。この大きな質問にいつも戸惑ってしまうのですが、なかなか短い言葉で表現できない。「企画やデザインや印刷やWEBなどです。」では到底伝わらない。これがレストランなら「フランス料理を創っています。」で伝わるのですが、「企画やデザインや印刷やWEBなど」では非常にくくりが大きすぎて「企画」ひとつにしても説明するには1時間ぐらいは必要になる。
 で、「毎日どんな仕事をしている?」に対しての答えのひとつとして「いろいろな情報を集めています。」ということが一番最初に伝えるようにしています。これまた細分化するとかなりの幅がある漠然とした答なのですが、デザインの仕事とはほんとにケースバイケースで、この法則でこのルールで進めていれば100点が確実にとれるということは皆無である。つまりなんらかのスタイル的なモノは存在してそれはデザインの歴史上セオリーのようなスタイルもあれば、その時代時代に人気のあるトレンドなスタイルもあるし、この世界で20年試行錯誤してきた自分なりのスタイルもある。これらが密接に関係し合いながら、過去・現在・未来の情報を集めている。というとかなり壮大な語感になりますが、そんなに大袈裟なことでもない。例えば、私がデザインを始めた頃ならば、ポスターを作るという作業は「どんなポスターにするのか?」「伝えたい商品の特徴は何か?」「この商品は誰に認知・理解してほしいのか?」「どのようなモチーフ(デザイン要素)を用いるのか?」「サイズは?」「印刷用紙は?」「印刷後の加工は?」「これはどのような場所に掲示されるのか?」などを考えてデザインを構想・着想する。スケッチブックにデザインのサムネイルやラフスケッチを描き完成形をイメージする。この作業は今でも代わりない。この20年間で変わったことは、ここからのプロセスである程度イメージが浮かんだらマウスとキーボードの作業になる。これがいい場合と悪い場合があるが、悪い場合が経験値としてない方はPCの中で試行錯誤が始まりエンドレスになる。作業中でも作業中のクリエイティブを見極める視点が少ないからである。とは言え、試行錯誤中に迷わないかと言えば迷いっぱなしである。この段階が言わば「デザイン」かもしれないと思います。ので、「毎日どんな仕事をしている?」に対する一番適切な解答は「よりいいデザインを創るために迷っている。」という作業をしています。
 だから、迷わないために情報を集めるのですが、そこでさらにサプライズな情報にヒットしてさらに迷うということも多々あり、本来求めていた情報は何だったかも忘れてしまうこともあります。新しい表現やデザインエレメントを発見した時は「ああ、この表現ええやん!」となり、これまでのデザイン上のセオリーや法則やルールがリセットされる。ここで一番重要なのが、その場面で自分自身が心から「リセットできるかできないか」なのです。デッサンで言うとモチーフを見て構図を決定してアウトラインを描き陰影をつけ立体感をつけていく作業中、「うん?ちょっとバランスが悪いなぁ~」「この立体感は違うなぁ~」「このフォルムはこの角度ではないなぁ~」と進行中のデッサンを観察して、「もう一度、やり直そう!」と、消しゴムで画面を真っ白に戻せるかという勇気なのです。1・2時間ド真剣に描いたデッサンをなかなか白紙に戻すのは勇気が必要ですが、これができる人とできな人の違いはやはり「見えているか見えていなか」なのです。理論ではないのです。この部分がデザインを創るという作業中に頻繁に発生するので、繊細でなければいけなですし、大胆でなければいけない。この幅があるかないかが何かを創るという作業にとても大切なような気がします。
 「毎日どんな仕事をしている?」の答えは以上のようなことを考えながら何かを創っています。で、ここの最後の最後のポイントは「楽しむ」ということです。これが難しいのですが、何かを創る時、それを楽しめていないと絶対に「いいデザイン」にはならないのです。
 次回は「好きなデザインは何ですか?」という質問もよくあるので、それについて書いてみます。

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