27cmのキス。

 生まれ育った街で小学生の頃、そこなら大きなキスが釣れたという釣具屋さんの情報を知り、日曜日の朝、友人と二人で自転車でそのポイントに向かった。少し雨が降っていたような記憶がある。国道沿いのそのポイントに薄暗い時間に到着して二人で海に向かって仕掛けを投げた。ああでもないこうでもないとキスの話をしながら、ドキドキしていた。ふぐやヒイラギなどの雑魚が釣れたがなかなかキスは釣れなかった。僕が最初に小型(12cm)ぐらいのキスを釣った。季節は9月だったと思う。秋のキスは落ちギスと呼んでサイズが大きくなる。友人にも小さいサイズのキスがヒットする。しかし、目的の落ちギスはこない。魚釣りは「朝まずめ」と「夕まずめ」って呼ぶぐらいに朝方と夕方によく釣れる場合が多い。二人で雑魚を釣りながら、落ちギスの話は続いた。昼前になり、雨も降っていたので、彼も僕も「今日は無理かなぁ~」という雰囲気になり、最初のテンションはなくなり、置いてあるロッドも見ずに他の話をしていた。その時、なにげに見えていた友人のロッドが信じられないぐらいにガクンと曲がった。「おい!アタリアタリ!!」と友人に声をかけた。友人が釣上げたのはそれまで見た事もないようなキスとは思えないぐらいの巨大なキスだった。丸々と太って普通にこれまで釣っていたキスとは別格のサイズ。早速サイズを測ると27cmだった。友人と僕はお互いに顔を見合わせてかなり長い時間この喜びのを分かち合った。
 その時は、目の前に釣り上げられたキスのことだけが頭の中でいっぱいになり、何ものにも代えられない達成感と満足感に包まれていた。まるで、映画のワンシーンのようだった。これ以外にも彼とはたくさんの釣りをした。小・中学生レベルだから決して本格的な道具で本格的な釣りではなかったが、その時は池や川や海で僕たちは最高の時間を過ごしていたと思う。また、二人で釣りに行きたかった。