ワイエス氏死去。

 16日、アメリカの「国民的画家」ともいわれているアンドリュー・ワイエス氏が他界された。91歳だったらしい。ワイエス氏の絵に出会ったのは東京でデザインの仕事をしていた頃だった。大阪芸大で油絵や銅版画を描いていた頃はまわりにいる同級生やデザイン学科のスタイルに翻弄されて、「自分のスタイル」とはの部分で表現的・手法的な表面的なことばかりが絵において大切だと錯覚してしまい、自分にとって絵とは何かを考える余裕がなかった。社会に出て、商業イラストレーションを描きながらグラフィックデザインに仕事として関わるようになり、よりその表現的な部分に気をとられてた頃、ワイエス氏の絵に出会った。そもそも、デザインにおけるイラストレーションの位置と本格的な絵画表現との違いはあるものの、ワイエス氏の絵のモチーフや表現手法はとにかくシンプルで力強さを感じ感銘を受けた。20代の頃の絵への関わりとはそういう意味で本当に表面的だったような記憶がある。そして、30代になり40代になり、たままた、仕事で東京に行った時に、渋谷でワイエス展があることを教えて頂き、再び、ワイエス氏の原画に触れることができた。仕事の都合があり、その会場には1時間もいることができなかったが、短い時間に昔、20代の頃受けた感銘が蘇る。あの頃感じた何かと同じモノがその会場の作品群に見つけることができた。また、それ以上の何かがさらに40歳になった自分に伝わってくるような感覚があった。それはまだこれだと言える程明確なことではないが、明らかに初めて出会った20代の頃とは違う感覚があった。それは、言葉で表現するなら、ワイエス氏の声が聞こえてきたような感覚だった。そんな感動をしながら会場を回ると、ひとつのコーナーに映像コーナーがあり、その映像にはワイエス氏の創作風景や家族とのシーンが映像で観ることができた。このままここにずっといて何回も何回もその絵の中にいたかった。しかし、仕事で会場を後にし、渋谷駅まで歩く中で、このタイミングでワイエス氏の絵に再会できたことがとてもドラマチックに思え、高揚している自分に気がついた。そして、再び油絵を描きたいと思い個展の構想を具体的に始めている。そんな中、本日の新聞にワイエス氏死去の訃報を知る。そうか、91歳だったのか・・・と。
 こんな人生を送りたい。ただ、そう思う。