アナログとデジタルの大きな違い。

 イラストレーションを学んでいた頃、合言葉ように「自分のスタイル」というキーフレーズが頭にあった。誰かに自分のイラストを見てもらっても、入社試験や面接に自分のイラスト作品を持ち込んでも言われる言葉「自分のスタイル」。モノマネかそうでないかがなぜ必要なのか分からなかった。なんとかこの世界で飯を食わしてもられるようになり、逆の立場で新卒者や中途採用の方の作品を見る立場なる。数年前まであれほどこの言葉が重く自分の心にのしかかっていたのに、その皆様の作品を見ながら「自分のスタイル」というフレーズを多用している自分。なんともしっくりこない。それは、今でもそうである。いったい「自分のスタイル」というのは何なのだろうとずっとずっと思い続けている。

 時は、アナログからデジタルに変わり必然として自分自身もデジタルギアを多用し仕事に取り組んでいる。が、常にアナログな作品に対するアプローチは同じ比率でいつも自分の手の届くところに置いているし、何かをクリエイトするときに、このアプローチはアナログかデジタルかと迷うこともなく、それぞれのベクトルを比較的迷うことなく活用できている。デジタルに入りたての頃はデジタルの魅力が一気に押し寄せてこんなソフトを使っていたらこれまで悩んでいたいろいろなことが一気に解決されて素晴らしいデザインがとても効率よくクオリティーも高いレベルで常に作り続けることができると驚嘆した記憶があるが、それも実は長く続かない。それはある部分は正解なのですが、ある部分は誤解だった。どの部分が正解でどの部分が誤解だったかについてはまたいずれこのブログで書きますが、今回はアナログかデジタルかという部分で少し思いの長けを。

 つまり、誰でも100人が使えば100人とも並行に引けるラインには個性がなくなります。わざとビビらせるならそれはそれでデザイン。しかし、与えられた紙面の中にラインを引く、文字組を正確にレイアウトするという部分では、数値的なデジタルギアと感覚的なアナログ手法とでは、同じゴールでも違うモノになるという現実があります。それは、例えば書籍の装丁において表紙のデザインを考える時によく自覚できること。与えられた表紙の紙面にレイアウトするのはタイトルと著者名と出版社名とビジュアルという4つのエレメントがあるとすると、これをどう並べるということがデザインの目的。さて、あなたならどうしますか?イラストレーターを使う、インデザインを使う、それは何でもいいのですが、タイトルのフォントサイズは?著者名の文字配置は?出版社様のロゴは名称の位置は?そして、ビジュアルは何してどう配置してこれらのエレメントを紙面にどう並べるか???ここだけでもう無限の可能性があるのです。仮にこのレイアウトを決定するまでに10日間費やしてもいい条件と6時間で決定しなければいけないという条件でデザインのクオリティーはどれぐらい変わるのだろうか?これらを意識下に置くともうデザインとは確率や科学のようなアプローチにさえ思えてくる場合がある。しかし、実際はそれほど~という部分と、それでも~という天秤のバランスでひとつに絞り込まなければならない。特に、デザイン系の新卒者さんなら例の「自分のスタイル」で斬新に反ステレオタイプからアプローチする。これがまた「斬新」なのか「シンプル」なのかを判断するにも細かいTPOがある。逆に10年以上の経験者ならば、出発点から2~3周して逆にこれが新しいと「自分のスタイル」を作る場合が多い。これは、何もデザインの仕事にだけ当てはまる方程式ではないような気もします。つまり、人と人がコミュニケーションされる場合に常にテーブルの上に出される「自分のスタイル」が重要なのである。

 で、アナログとデジタルについて最後の最後の瞬間まで「自分」はどう考えているかがデザインとしてカタチになることがそれ自体が「自分のデザイン」であるべきなのである。だから、デザインの仕事は有意義で楽しくそして辛く苦しいのである。挑戦や葛藤や危機感のない自分ではつまりデザインも同位なのである。感激や感動や高揚感がない自分ではつまり・・・なのである。アナログからデジタルへの振幅を意識下に置きながら、いつでも相互を行ったり来たりできないと、テーマをひとつの画面にまとめることはできない。まとめるためのバランス感は唯一無二なのである。何かに所属したり何かの認定公認に依存することは大切なことではあるが、心の感覚の羅針盤がいつでも360度回せる状態にする必要がある。数多の方程式には絶対に導き出せない答が存在する。だからアナログとデジタルの間で苦悩する異議があると思いますね。