「ソウル・コレクター」について#02。

 改めて「ソウル・コレクター」について。勿論、昨日の記述どおり物語の詳細をこのブログで記述することはひかえたいと思っているのですが、ある方の寸評どおりの部分も確かに感じたのですが、さらにそこから熟考したり自分自身の感想をいろいろな角度から検証してみると、確かに物語の盛り上がりには欠けたという印象が否めないのですが、逆にそれが実は恐ろしいのでは・・・とか、犯人像は若手だったことから個人的な理由でソウルコレクトに走るわけですが、これが、もっとサイコな犯人だったらとか、もっと、組織的な犯罪パターンになっていたらと考えるとこの物語の着眼点はかなり大きく肥大する。また、犯人がターゲットとする個人情報についてもその情報網の活用術が非常にミクロだったことと、目的が非常に個人的な収集癖の悪いパターンだったから結果被害的には非常にミニマムだったように思える。これだけの着想と物語のフレームを構築できる作者なら、他に物語の展開パターンは無数にあったのにも関わらず実はこのテイで物語を完結させてたのは「狙い」「計算」の部分で、実は続編があるのでは・・・?もしくは、別の物語が用意されていて、ライムシリーズはその伏線だったり・・・?とか考えてしまいます。だって、ここで回収されている個人情報が網羅された内容は凄まじいアーカイブ総量である。これらが実際にどこかで常にリアルタイムにどこかのサーバにアーカイブされているということが、例えフィクションであれ、何かの事象に元づいているはず。それが、登場人物だけの範囲内で物語として500ページ前後の物語として完結されているから、なんとなく消化不良な感じだっただけで、このプロットをいかようにでも広げる方法や選択肢は絶対にあったはずだから、そういう視点で言うならば、じわじわとボディブローのようにこの物語はソウルに効く話だった。そして、物語は終わったが、読み終えたあとも何か余韻というか、それ以上の爪痕を残された感覚です。

 逆に自分の中にある記憶が自分自身を作り、アウトプットされた全ての「関わり」や「ふるまい」が何かの形でデジタルデータとしてどこかに保存されていることも現実であり、厄介なのはそうでないどこにも保存されていない、アナログの軌跡こそが、今の自分を構築している。そして、未来はその変数の中でしか広がっていかないとしたら、これまでの軌跡こそが人生をカタチ創っているほとんどの要素・材料だと言えなくもないのでは・・・と考えてしまう。ってほどこの作品は素晴らしいように感じ始めています。ただの小説として読んでいる間は登場人物や物語の展開に一喜一憂していればいいが、実はこの物語は誰にでも起こりうるお話で、社会に属している以上必要不可欠なアイデンティティが破滅へのトリガーになるっていうこの設定は素晴らしい。

 ブレードランナーでルドガー・ハウワーの最後の一言が聞こえてくる感覚である。0の上に1を重ねる量子コンピューターという概念がすでに起動し始めている。AIの覚醒をテーマにした物語が今後もいろいろなカテゴリーで登場するだろう。予見するにも共鳴するにもある一定の予習が必要な感じ。