逃げないように。

 ようやく、ほんとにようやくコンスタントに二桁をキープできている。これは体調がいいことも大きく影響しているし、体調を維持するために毎朝毎晩やることをやっているからに他ならないが、それでも心技体であることは間違いない。体調や技術の面もありそこに立った時に不安がある場合、その不安は必ず実現する。それはどうあがこうが無理。必ずその不安どおりになるから面白い。まだそれを面白いと楽しめているうちはいいが、何をどう考えて準備して戦略と知恵を総動員してそこに立ってももわもわと不安の灰色の雲に空が覆われる。その雲を吹き飛ばすためにいろいろな精神的な思考のドア穴のカギを用意したつもりがどれも開かなかった。つまり、今思うと全ては「逃げていた」のだと思う。

 数年前にある1本にたどり着いた。それは、中古ショップで発見したとてもハンサムな1本だった。それまでに自分の刀を探すために、いろいろな雑誌やサイトをチェックしてどういう1本だったら納得してそれを持ちそこに立てるのかをイメージしてリサーチを繰り返した。しかし、理論やふれこみで得る情報からの知識では頭とシンクロせずに、練習に行ってもしっくり手に馴染まないし切れ筋も悪い。必然的にそれを持ちその場所に行っても同じ。練習場で10~20本に一回出るか出ないかの切れ筋は絶対に本番では出ない。そして、負のイメージだけが心に身体に刻まれる。そんな十数年を繰り返してきた。これは辛いってものではない。そして、腰を痛めてからボトムだった。「お前は道具に頼るのか?」と自問自答したが、道具に頼るしか仕方ないやん!と自分に逆ギレするしか仕方ない期間が続いていた。

 いっしょにそれを始めたライバルがいっしょに回っていて90を出した。完全なる敗北宣言だった。辛いを通り越して後半は彼を心から応援していた。そのラウンドが終わって、例えようのない悔しさに苛まれた。それが言わばリセットだったように思う。ただ闇雲に走ったり打ち込んだりするのではなく、まず、体調を戻すこと。これが基本だと痛感した。決して派手なトレーニングではない。ゆったり動き、半身浴をして、地味なストレッチをして、背筋を伸ばすぶらさがり。早く寝て早く起きる。これを完全に毎日のルーティーンにした。そして、4年。ヘルニアの部分はなんか無理な姿勢をすると痛いが、この夏は富士山山頂にも立てたし二桁スコアも3回続いている。地味な努力の末、結果が出てくれている感覚である。

 さぁ、身体は大丈夫、刀もある、あとは、そこに立ち「逃げない心」で振り降ろすことだけである。