引き出しづくり。

 世の中のニーズが多様になったとはよく聞くが、それは、商品の品質やコストの吟味ということでもある。デザインの場合この「商品の品質」ということが、印刷物やWEBサイトや映像コンテンツのクオリティーになり、コスト面ではイコール制作費ということになる。だから、一般的などこでも購入できるような印刷物や看板・サイン関係はバランス的に品質のよりもコストの比重が必然的に大きくなる。だから、例えばのぼりなどの作成をお願いされても、デザインはするがコスト面で、国内ののぼり制作会社様と競争するつもりはない。というかそこを目指すことができない。つまり、「のぼり制作会社日本一安いお店」にはなれないのである。「オリジナルののぼりを作ってほしい。」という依頼は受けるが、コスト面では必然的にどこかの日本一のぼりを安く制作する会社には絶対勝てないのである。この「多様なニーズ」の判断を見誤ると仕事として成立しなくなる。ここが一番の本丸。

 ならば、「コストもさることながら、ちょっとデザイン的に技術的にややこしいお話なのですが、一度、お願いできるかどうか聞いてください。」というご連絡は非常に嬉しい。何もあらゆるややこしいお仕事を100%完璧にデザイン・クリエイトできる自信があるからということでは決してない。そのほとんどが実際頭を抱えるようなご注文(ニーズ)の場合が多いので、一旦、ヒアリングの場では答を出さずに持ち帰る。そして、考えて相談して検討してそのニーズに対するアプローチや方法論を新しく創るのである。これまでそんなことばかりやってきたから、少し(23年分)ぐらいは経験値とノウハウがあるつもりですが、それでも、現代のニーズに対しては「引き出し」が足りないことばかり。だから、時間があれば「引き出しづくり」をしている。デザインの仕事に対する「引き出しづくり」とは?組織で考えず個人で得られる収集できる情報やディテールや感覚を一瞬でアウトプットできる状態にする訓練である。こう書くと非常に大袈裟なことのように聞こえるかもしれないが、これを仕事としてやっているというニュアンスになるとたぶんかなりのストレスになる。だから、このような思考や行動を心から楽しめないとこの仕事は無理。絶対に続かない。意外とヨコモジ仕事はジミで大変。

 で、本当に「ややこしい案件」や「こだわりつくしたご注文」や「技術的に高いハードル」をお客様から投げていただくことで必然的に自分自身の「引き出し」が増える。頭は抱えるが心の中ではニヤリである。これが癖になるといい意味でのサウンドバック状態が気持ちよく中毒になる。「どこからでも叩いてください。全部受けますから。」的な快感なのである。これは完全にMだとある社長様にご指摘いただいたが、まさになのである。でも、リングに立っている以上、どんなパンチを貰っても倒れません。そのタフさと能天気な明るさとフットワークさえあれば、クリエイティブデレクターという仕事は私の天職かもしれないですね。まぁ、打たれているだけれは楽しくないですし、時にはテンプルに重い右フックを入れたいですしね・・・。

 ほんと、無理難題を言って頂けるってことは心から嬉しいことだと思います。クリエイター冥利に尽きますね。