ワンピースについて。

 いよいよワンピースの新しいステージが本格的に始まった。海底への冒険の旅がああも自由自在にスピードを加速させるとは、そして、一旦、マリンフォードでの頂上決戦とエースと白ひげへの追悼を完結させながら~の、新世界への伏線を並べながら、海底へ向かう冒険へ切り替えるパワー。まさに、ルフィーの冒険はノンストップである。奇しくも深海への好奇心は今回の放射線の海洋への流出やゴアの仮説や諸小説でのフィクションの世界ではそうとう旬なテーマである。尾田先生がどの段階で深海をテーマにしようと構想しておられたかとなるとたぶんアーロンの頃からかもしれないし、トムさんの頃からか、もしくはインペルダウンの頃にこの設定が頭にあったのかもしれない。ってぐらい、このわくわくをひも解くキーワードの散りばめ方が秀逸なのである。知らず知らずにルフィーの冒険に気持ちを奪われていると、ふと振り返った時にとてつもないトラップが仕掛けられていたことに気づきしばし愕然とする。これが構想力だと言わんばかりに太い構想のルートに並べられた尾田さんの世界はもう誰に止めることができないようである。今回のあの大震災と津波の被害でさえ尾田さんのイマジネーションは飲み込もうとしているから凄い。政治・メディア・思想・専門家の今回の震災を受けて「ああするべきだった・・・」「責任の所在はああだのこうだの・・・」「今回の事故はそもそもモゴモゴ・・・」。そこばかりを豚のように掘り起こしてもトリフは出てこないんじゃないのかな。

 で、マリンフォードの頂上決戦を受けて、ルフィー達は成長した。敗北を知り自分たちの弱さを知り、世界がとてつもなく大きく広いことを知った。そして、2 years later...新しい物語が始まった。世界のパワーバランスは変わったように思えるが君臨するそれが別のチカラになり、海軍も新しい組織となり海賊や革命軍に対して備えている構図である。さてさて、深海には何が存在するのか?そこにも強大な力とそれに対抗する勢力が存在し、過去と現代と未来を混沌としながら、様々な尾田さんが生み出すキャラで楽しい活劇が展開されることだろう。

 ルフィーはレイリーを、ゾロはミホークを師匠とし強くなっている。漫画の世界観だから簡単に強くなれるが、それでも、ワンピースはそのディテールをしっかりと描いている。「何故強くならなければいけないのか?」「チカラを手に入れるということはどういう意味があるのか?」「どんなチカラを自分自身は求め誰を師匠とするかについて最終判断をするのか?」これらが安易な絶対悪に対してのそれならばワンピースほどのぶ厚い物語にはならない。ひとりひとりの心の葛藤やジレンマをしっかりと描くからこそ、これらの「強くなりたい」疑問が読者に共感を与える。だからワンピースが面白いのである。だから、GaやDoやEvやBrは完全スルーしてもいい漫画・物語となるのである(主観として)。

 さてさて、62巻を手にしている方、まだ手にしておられない方。今後、「深海」というキーワードはエネルギーの分野でも環境汚染の分野でもそれぞれの国の産業や流通の分野でもそして観光産業の分野でもおそらく取り上げられるメインテーマでしょう。すでに、グランブルーのあたりから海洋に対するロマンは切り込まれていたのかもしれないですが、世界が一つになるために、ボーダーレスに思考するために、海洋について興味を持つことは地球を知り国を知り自分を知るぐらいの共通言語として必要不可欠なテーマになるでしょう。宇宙への興味の前に自分達の今立っているこの大地と海洋について興味を持つべきなのだろう。

 最初に海洋に漏れた放射線はたぶんもう深海の海流に乗り、ロスあたりに到着しているだろう。深海で誰かが浄化していない限り。