本当の知覚。

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 マッコウクジラは、水深3000メートルの深海に潜るとき、頭蓋骨のなかの特殊な器官をつかって、自らにかかる気圧を正確に測る。この地球で、5000万年以上も生き抜いてきたといわれる彼らは、想像を絶するほどの膨大な海洋データを蓄積し、分析し、解析し、それを認識することで、この地球に生き続けてきた。さて、人間はいま進化しているのか、退化しているのか。本能は研ぎ澄まされているのか、失われているのか。もっと遠く、深く、高みへ。私はもう一歩、新たな地平線へ、踏み出す。世界は知覚できる。とある広告のライターは書いている。

 この部分の文章だけを切りぬいてしまったので、元々この広告が何の商品の広告だったか分からなくなってしまったが、それにしても、このライティングはいい。比較対象がマッコウクジラだという部分が、なんでもかんでも比較対象にくじらを出すというテイが多いので、しっくりは来ないものの、人間の進化か退化を問う切り口としては正々堂々のストレートボール。

 恐らく情報系の企業の広告だろうから、「知覚」というフレーズで自社の営業アイテムを評価してくださいという軸足だろう。自社の営業アイテムを紹介・訴求するのに、「マッコウクジラ」や「人間の進化・退化」をフレーズとして使用して成立するような大企業は正直羨ましいが、そう妬んだところで何も始まらない。ただ、人間の未来という普遍のベクトルを「進化」と「退化」という切り口で語るならば、それ相当のコマを用意していなければ竜頭蛇尾となるだろう。言葉ではなんとでも言える。大きい会社も小さい会社も組織も個人も五感で知覚する。思考は筋肉から、行動こそが思考であり、こうしてキーボードを動かし、マウスをコネコネしていることは絶対に「行動」でも「知覚」でもない。大海を優雅に泳ぐマッコウクジラに例えるなら、人間の特殊な器官を鼓舞させたいものですね。