コツコツ。

 「職人技」と聞いて、最初に頭に浮かぶ言葉は「コツコツ」だ。熟練の技とはすべてコツコツと少しづつ積み上げて成立している。一方、「プロフェッショナル」と聞くと、なんかこう一気に直感的なスピードで成果が生まれるようなイメージがある。「職人技」と「プロフェッショナル」の間の語感にあるこの違いは、自分自身の感覚の中で、どのように生み出され区分けされていいるのだろう?世間一般の「職人技」に対する印象はいったいどんなニュアンスが正解なのだろう?「職人気質」と聞けば、無口で頑固で実力主義の現場主義。「プロ意識」と聞けば、物事が常に整理できていて、論理的で理路整然としているイメージがある。職人が「アナログ仕事」で、プロフェッショナルが「デジタルワーク」みたいな違い。同じ仕事なのに、極端にイメージが私は異なっている。

 私が絵を描く時は、明らかに「コツコツ」だし、デザインを考えてソフトで作成する状況でも「コツコツ」だ。さらに、プログラムの改造や映像コンテンツの編集加工となると、「コツコツ」どころの騒ぎではない。普通の人なら、ちょっとクラリとめまいするぐらいの数のレイヤーを微調整をして、一本の成果物を仕上げている。プログラムを改造したことのない人にも、映像のレイヤーを微調整したことがない人にも、この「コツコツ」は伝わらないだろう。単純明快にイラストレーターだけで数日、コツコツ地図を創った経験やページモノのDTPをしたことのない人にも、このリアリティーは伝わらないだろう。恐らく、ひとつひとつの作業を細かく分解して理解することは、素人でもできるが、大きな設計に基づきコツコツ積み上げなければ、売れる成果物にはならない現実。しかし、悲しいかなこのコツコツを整理することは、コツコツではできない。なぜなら、すべて職人技なのだから。

 無口で寡黙で頑固な職人技がデジタルワークをしているので、もう、あたりまえの作業をコツコツ積み重ねていくしかないのだ。ここにセンスもアイディアも工夫もないのである。

 一方、テレビププログラムで「職人」と呼ばれている人が登場して、テレビ用のシナリオ通りに、芸能人をうならせている場面ををよく見かけるが、あれはあれで立派な「職人技」だ。