修正・訂正・微調整。

 デザインの仕事は一見、華やかでクールな印象を持たれやすい。実際、自身も東京でデザインの仕事を始めた頃は、自分のスタイルをクライアントに披露して理解させ、スイスイっと仕事を成立させるという理想像だけを描いていました。しかし、精通すればするほど、アイディアや着想はごくごく初期の段階のプロセスであり、独創的な表現や固執した技術だけでは成果につながらないことに気づきます。当然、無知で知識が足りていない状態ですからこそ、そう捉えてしまうしかないわけで、その裸の王様的な状態がクリエイターだと思い込んでいたのです。今、考えると冷たい汗が流れます。しかし、世の中には有名・著名なクリエイターがいて、その皆様は実際、自分のスタイルのみで成果を生み出すことを期待されている人たちです。しかし、一般的なデザインの仕事はこのような一方通行では決して成立しません。しっかり、クライアントさんの企画書や指示書を頭に入れて、デザインの方向性や表現手法なども習得しておかねばなりません。なんせ、それが欠落していれば仕事が成立しないのですから。いい仕事はこのような知識やテクニックを習得するとてもいい機会です。それは、20代の頃も、51歳になった今でも全く同じ捉え方をしています。

 着想・設計・制作からの、「修正・訂正・微調整」、このチューニングのテクニックこそが実はデザインの仕事の真骨頂なのだと捉えています。

 しかし、ただのチューニング専門職ではデザインの仕事は成立しません。修正・訂正・微調整作業など誰でもできるからです。このプロセスでも「より良く」「よりらしく」という捉え方をする必要があるのです。そのための経験値であり予備知識であり専門的なテクニックなのです。自分の理解力の低下、知識の浅さ、モチベーションの鈍化などなど、マイナス要素はあげればキリがなく、苦しいことも多い仕事ですが、それでもどこか「楽しい」のが、デザインの仕事の一番の魅力だと思います。私は。

 とにかく、うまくことが運んでいる状態、気持ちが高揚し調子に乗っている時こそ警戒しなければなりません。諸手を上げて浮かれていると、ひっそりこっそりと「暗雲」が西の空からやってくるからです。