IMPROVISATION(インプロビゼージョン)

 インプロビゼーションとは即興である。本来は音楽や演劇の分野で使われている用語です。型にとらわれず自由に思うままに作り上げる、作り上げていく動きや演奏、またその手法のことを指しています。アドリブともいいます。

 形式による制約よりも、演奏時・演舞時の知覚を優先とすることで、音楽・ダンスなどにおける創造の源流でもあり、作品制作時のインスピレーションとも深く関係しています。

 さて、「即興」という言葉の語感にはちょっと「軽快=軽率」「直感=安易」などのニュアンスが含まれているような気が私はしています。形式や理論を重んじる、方程式や法則から生まれるものこそが真価であり、軽快さや直感で生まれるモノは品質的に低いと。どこか「その場しのぎ」「小手先の」というニュアンスが通念にはあります。しかし、デザインの仕事やアートの制作現場では、即興から生まれる優れた成果が多い。むしろ、即興で生まれたモノは鮮度が高く表現的に研ぎ澄まされているケースが非常に多いと捉えています。何故か?それは、つくり手として理論や理屈でつくることが成果に足してあまり効果的に作用していないことが多いと考えているからです。

 若い頃、デザインの仕事現場で知識もテクニックも足りない状況では、自分の中に蓄積し予習した知識だけが唯一の頼りでした。当然、経験がないということは失敗も壁にもぶつかっていないピュアな状態です。テクニックも知識として頭の中にはありますが、実戦経験とはシンクロしていませんから、言葉にリアリティーがありません。知識だけ理論だけでどれだけ言葉を巧みに操っても人の心は動かないことを知らなかったのです。そんな実戦経験から学んだことが、「即興」の重要性でした。仕事には必ず、相手(クライアントさん)が存在します。ただ相手の意向に合わせるという安易な対応ではなく、相手がいい仕事をしてもらうために放った言葉やイメージをどこまで受け取れるかがまず仕事のスタートラインです。どれだけ経験がありテクニックがあり知識が豊富だとしても、まず、相手の考えを受け取る力がなければ、仕事は成立しません。受け取る情報も明確な言葉が理路整然と整っているとは限りません。むしろ、そうでないケースの方が圧倒的の多いのです。まして、クライアントさんはつくるプロではありません。意図や狙いはあっても伝えることが得手なわけではありません。伝える表現力が高ければ、つくり手としても能力がることになりますから、私は必要ありません。そのような場面では、「聞くテクニック」や「感じるテクニック」が必要なのです。

 そして、「即興テクニック」が有効です。仕事の実戦現場でのヒアリングとはレコーダーで録音するのような無味乾燥な捉え方では何も引き出せません。そんな聞き方なら簡潔にまとめた企画書を預かってくるだけ事は済みます。つくり手として仕事の主旨を聞くということは、「引き出す」ということなのです。自分の理論や理屈をただ当てはめて正解と不正解で判別するのなら、小学生でもクリエイターになれます。言わば、小学生レベル、もしくは、それ以下のヒアリングテクニックでは実戦現場では通用しないということ。「雑談テクニック」「即興テクニック」はとても重要なコミュニケーション能力なのです。当然、リズム・テンポ・ユーモアなどのアドリブも効果的です。