特殊な設備。

 今日、仕事で長浜市内に出て踏み切りを渡ろうとしたら警報が鳴り出した。長浜駅周辺の遮断機だったので、長浜駅出発の新快速待ちだった。いつも通る踏み切りだったが、今日は何故か遮断機のバーを固定したフレームに設置された、小さい掲示物が目に止まった。恐らく2分間ほど待つことになるだろうと思い、その掲示物を読む。その掲示物に書かれていた内容を読み、いろいろ荒唐無稽なイメージ(想像)が膨らんだ。

 その掲示物にはこう書かれていました。

 この踏み切りには特殊な設備がしてありますから、警報器が鳴ったら踏み切りの上で立ち止まらず、す早くお渡りください。

 うん?「特殊な設備」?その掲示物には「す早くお渡りください。」とは書いてあるが、もし、立ち止まらなければ、その特殊な設備がどうなるのか?については書かれていなかった。警報が鳴っているのだから、電車が来る合図だということは子どもでも分かること。故意に立ち止まるなんて人はいないはず。しかし、もし立ち止まらなければ、一体、ここに記載されている「特殊な設備」は、立ち止まった人に対して、どんなお仕置きを与えるのだろう?

 まさか、映画SAWのように、映画CUBEのように、立ち止まった人がバラバラになったり、縦に降りてきたバーが横にスライドして強引に立ち止まった人を線路の外へ押し出すとか?もしくは、映画トランスフォーマーのように普段はどこか警報器の中か、地面にしまい込まれている金属のバーが瞬時に現れ、立ち止まった人を踏み切りの外につまみ出すのか?そんな途方もない想像が膨らんだ。

 すると、杖をついたおじいちゃんが踏み切り直前まで歩いてきて、普通に止まった。私は車なので左側、おじいちゃんは右側。もし、今、このおじいちゃんが何かの原因で踏み切り内に侵入し、その特殊な設備が起動し電車が来るまでにおじいちゃんを一瞬で処理してしまったら、などと考えると、不謹慎だがひとり車中で笑いがこみ上げてきた。

 また、別の角度でこの「特殊な設備」看板について考えてみた。恐らく、JRの内部で踏み切りを設置する際、万が一、急いでいる人が中に侵入しないようにとこの掲示物の設置が必要だという話になったのだろう。もしくは既存のルールで踏み切りには必ず侵入者に対する警告表示が義務づけられ、その文章を担当者が考え、しかるべき手順と確認作業で、文面を制作した担当者から部長さんへ確認作業が行われたはず。それも、踏み切りに設置している掲示物だから、そう最近のお話ではない。20年、もしくは、もっと以前からこの文章はあったはずだ。一昔前なら「特殊な設備」が何であれ、踏み切りは踏み切りだから、バーが降りれば侵入は禁止というモラルとして深く考えることもないだろうから、この文章を考え出した人は曖昧に「特殊な設備」と表現しておけば、明確に理解・実感はできないが、ほとんどの人が侵入を断念するだろうと予測したのかもしれない。しかし、「特殊な設備」が作動したら、踏み切り内に謝って入った人がどうなってしまうのか?については、掲示物として明確にする必要があるように感じた。

 だって、私自身、長年、デザインの仕事をしてきて、いろいろな文章に触れてきたし、いろいろな施設のサインを制作したり文章をチェックしてきた経験があるが、どの案件であれ、制作物に記載する文章として「特殊な設備」と書いて、それが何かを書かないという案件は経験がない。天下のJR、そのあたり、少し緩いのではないだろうか。

 そうこうしていると電車が目の前を通り過ぎ、普通に踏み切りを渡り終えたが、私の頭の中では、映画CUBEのオープニング。立方体の内部、その中央部分に立っていた囚人のように、あのおじいちゃんが一瞬でサイコロステーキのようにバラバラになるシーンが浮かび、深く小さく長い笑いが止まらなかった。

 いったい、「特殊な設備」ってなんだ?