REデザイン。

 まっさらの状態から仕事が発生する機会は非常に少ない。つまり、新しい企画、新しい事業、新しい商品に対するデザインを制作する機会である。そのような機会でさえ、世の中にはすでに存在する製品があり、ライバル会社との競合商品などの場合、それらを意識したデザインが必須となる。よって、常にデザインとはすでにある何らかの成果を充分に分析し「より良く」することが求められるのです。安易に制作会社を変更すれば、つくり手を変えれば、リデザインが完結するとはならない可能性が高いのが、デザインという仕事の難しさであり、本来の価値でもあります。

 この捉え方はすべてのデザインの仕事にあてはまるので、まず、仕事の案件に取り組む際は、分析力が非常に重要になります。当然、定期的な案件や自社で取り組ませていただいた案件についても、「そろそろリニューアルを」という展開はよくあり、以前の自社で制作させていただいたデザインをさらにブラッシュアップし、新しいアイディアや表現手法を取り込んで、より良いデザインをつくらねばならないのです。「デザインの仕事の真価」とはこの部分にあるため、テクニックや知識の鮮度を常に維持することと合わせて、分析力の活性化も同時に取り組まなければ、いつのまにか感覚が鈍り、古臭い、特に年齢と共にこの感覚は鈍化・劣化・退化するので、私など特に歯を食いしばりながら、感覚の鮮度をキープしなければならない。当然、現状維持に甘んじていては、下降を意味するので、何がなんでも、石にかじりついてでも、上を向いて歩いていかねばならないのです。

 そして、デザインの仕事の評価は多種多様です。しかし、クライアント様に理論的な説明や、多くの事例との比較検証事例を説明しても、納得していただくことは難しい。そんな常識のお話をしたところで、お客様はピンとこない。それはそのはず、私もユーザー目線に立った場合、「欲しい!」と思っている商品に対して、理屈や正論を並べられても、定石はどうでもよく、自分が「欲しい!」という気持ちをいかに納得させてくれるか?という売り手様から買うのが普通の流れなのですから。つまり、私が「欲しい!」という気持ちをどこまでプロの売り手として理解(分析)してくださるかで、買い手を決めているのです。

 しかし、「リデザイン」とひとことで言っても千差万別です。長年、デザインの仕事をしてきましたが、同じパターンが適用できるケースなど皆無でした。例え同じような内容のテーマの規模の仕事だったとしても、同じパターンの分析は通用しません。それが現場です。つくり手でさえ、その日の気分で分析手法や感覚が変化するのですから、買い手の気持ちが理論や理屈でいつも整うはずがない。「昨日まで、このデザインでOKだったに・・・」「このタイプで合意していたのに・・・」「このテイストで喜んでいたのに・・・」、今日は今日の風が吹き、確実に明日は明日の風が吹くのです。

 そんな、一見、苦しい仕事をよく続けてきたなと自分でも思いますが、実はこれが楽しい。

 これこそがこの仕事の醍醐味だと思っています。

 自分も変化するし、クライアント様も変化する。この微妙な間合いこそが、実はデザインが、デザインこそが埋められる唯一のアプローチなのだと思います。杓子定規に「ねばらならない」「であるべきだ」を繰り返していると、いつか孤立する怖さを痛感しているだけに、つくり手は貪欲に好奇心と向上心と探究心で、明日吹く風を予測しているのです。