デジタルツールの利点。

 改めてデジタルツールの利点は圧倒的な効率と正確性で複製することだ。

 ひとつのオブジェクトを簡単に複製できることが利点なのです。

 東京でデザインの仕事を始め、2年後初めてMACに出会った。英語版のイラストレーターを覚えながら、なにかとてつもない道具を使っている興奮と期待があった。覚えている最中やそれを少しづつ活用でき始めた頃はデザインの仕事のノウハウも平行して習得時期でもあり、この興奮と期待がどんどん大きくなった。そして、仕事を幅を広げるためいろいろなデジタルソフトに挑戦し探求してきたが、ふとこれらの経験を思い返すと、デジタルツールはただオブジェクトを複製しているだけなんだと気づく。最近のお話である。

 つまり、1を2に、2を100に圧倒的な効率と正確性で複製することはとても優秀であるが、0から1を生み出すことはしない。白紙の状態から1つ目のオブジェクトを描くためには自分の中にある引き出しから1つ目のオブジェクトを出してこなければ何もつくることができないのがデジタルツールのようです。

 最近はネットの中にふんだんにあるテンプレートや無料素材を材料として用意し、それを複製(加工・編集)すれば意外と簡単に誰にでも、デジタルツールのファンクションさえ習得していれば仕事が成立する。それも、ふんだんにある材料は非常に充実しているため、ただ複製しながら「それらしい技」さえ駆使すれば「それらしく」仕上がるのだ。デジタルツールからデザインの世界に入るとこの「それらしさ」を自分のデザインテクニックと勘違いしてしまう傾向になり、むしろ、その入り方しか習得していないため、0から1の感覚を実感しないままデザインの仕事を続けることになる。

 これはこれでイマドキの主流であるし、「それらしいデザイン」が成果として評価されているため、仕事としてビジネスとして当然成立してしまう。つくり手の中にもあまり0から1を生み出すことに対して意識せずとも、「仕事として成立していればいいじゃん」的な感覚と、「私が覚えたデザインのノウハウはこれですから」的な意識でも、とにかくその成果が売れるのだからデザインの仕事として大きな問題ではない。逆に余計な時間をかけ、無駄な労力を費やし、0から1に固執することで、何も生み出すことができないぐらいなら、1から2へ、2から100へ、サクッと仕上げた方がスマートなのである。

 さて、この感覚、正しい順回転はどちらなのだろう?デザインの仕事のテクニックやノウハウをアナログツールの時代から始めてしまったゆえに、このような感覚になっているだけであり、世の中の大きな潮流がもうその「0から1」の感覚を見切っている以上、そんな砂金を探すようなことをせず、サクッと海に出て大きな収穫を得ればいいだけなのかもしれない。

 とりたてて「0から1を」などと言ってはみたが、結局、アナログツールでもやっていたことは同じで、なかなかおいそれと0から1は生み出せていなかったはず。0.3ぐらいから始めていたはずなのである。デザインの仕事はアートではないが、デザインの仕事がそもそも差別化やテーマの価値を増殖させる作業だから、100よりも101の「1」があるのかないのかで評価が上がるとしたら、アートの感覚をデザインの仕事に適用するノウハウも無駄ではない、無駄ではなかったと、私は捉えている。

 100円ショップに並ぶあらゆる商品の中に、101の価値をデザインの力で追加できれば、素晴らしいことだと私は思うのです。