天然な人。

 世の中には天然な人がいて、私のように理論理屈が先行したタイプは天然な人にはまったく刃がたたない。対抗策としてこちらも天然モードに切り替え、直情的に言葉のやりとりを試みるが、それでも真から天然な人には太刀打ちできない。

 テレビを観ていいるとたまに天然な人が登場して司会者を困らせているが、正にあの感じ。例えば、その代表選手としては松本伊代さんだ。テレビ番組だからだんなのヒロミさんも多少誇張脚色し話を盛っているだろうが、それでも伊代さんの実力は飛び抜けている。結果、ヒロミさんと伊代さんの関係ってバランスがとれていて夫婦円満となるだが。若手の2トップとしては、タキザワカレンさんと平愛理さんである。テレビの撮りだから飛び抜けている天然加減が爆発するシーンだけを観ていることになるので、多少、編集者の意図も作用しているものの、現場でのリアルタイムであのやりとりは強烈だろう。

 例えば、タキザワカレンさんなどは、ハーフということもあるのだろう、少し日本語の使い方が天然である。恐らく「下積み」というニュアンスのトークの流れだったのだろうが、それが簡単に「山積み」になるし、敬語も使い方がおかしい。タレントさんとしてはその天然さもひとつの才能であり個性だからいいが、日常生活でそのタイプの天然を炸裂されると結構辛い。

 平愛理さんも、さんまさんの番組で「好きな動物は?」の質問に、「猿です。」と答える。で、さんまさんが「日本猿?」と聞くと「ゴリラです。」と返す。さらにさんまさんが「えっ!じゃぁ、猿というよりもゴリラが好きなの?」、愛理さん「はい。」と、ここまでは、許容範囲想定内だが、「じゃぁ、ゴリラが好きですでええやん!そやろ?」と伝えると、愛理さんは「でも、一番好きなのはライオンです。」と。さんまさん「なんじゃそりゃ!」でドカーン。このキャッチボール、文章で読むとテンポとか間合いが悪くなるが、実際の流れを見ていると愛理さんの天然は飛び抜けていた。

 とにかく、お笑い芸人でもしっかりネタやギャグを練り込みひとつの技・スキルとして秀逸なキャッチボールを展開する天才も多いが、天然な人はこんな戦略的で攻撃的な人でも関係ない。向かうところ敵なしなのである。「無敵の天然」なのである。当然、悪意の欠片もなく、その場は練り込んだネタやテンポのある笑いよりも和み瞬間的に沸点に達するのである。

 私の近くにもこのタイプがひとりいて、当然、私は何をどう切り替えそうが勝てる余地・見込みがない。恐らく天然の人は「勝ち」とか「負け」とかまったく意識していないし、相手のリアクションさえもどうでもよく、とことん自分のペースを崩さない。結果、どんな言い合いになったところで白旗をあげるのは私なのである。

 私は「オロナミンC」が好きなので、買い物に行くんだったら「オロナミンC」も買ってきてと言うと、「空ビンがたくさん貯まるからダメ」と言われ却下となる。しかし、「チオビタ」や「乳酸菌ドリンク」は買ってくる。その理由は「安かったから」なのである。「ええっ!チオビタも乳酸菌栄養ドリンクも瓶やん!それに、オロナミンCと比較して価格もあまり変わらへんし!」と言うと、「いや、ちょっとだけ安かった」と言われる。なるほどなるほど、100歩譲って、どれだけ安かったのかは聞かないが、でも、「それも瓶だからゴミになるやろ」と返すが「ちゃんと洗って分別するから大丈夫だ」と言われる。「なになに、だったらオロナミンCも飲み終えたらちゃんと洗って分別したらええやん!」。すると、「オロナミンCは炭酸が強いから嫌いだ」と言われる。私はもうオロナミンCのことはどうでもよくなり、諦める。

 もう、理論理屈ではないのだ。天然は怖い。

 人はどんなに強い北風でもコートは脱がないのである。ああ、太陽になりたい。