他人の仕事。

 デザインの仕事っていろいろな業種の方と出会う機会が多い。例えば、ホテルの接客業や経営業に携わっている人なら、ホテルに宿泊や宴会目的で多くの人が来られるので出会う機会は多いし、大学の教授ならばいろいろなタイプの多くの学生を相手にする仕事なので出会う人の数は多いだろう。しかし、デザインの仕事は少し出会い方が違う。例えば、本の表紙デザイン(装丁やカバー制作)をつくる仕事の場合、著者についてリサーチし原稿のチェックをすると当時にその仕事について無知ではいられない。さらに編集者さんからの要望などもデザインをつくるための材料としてインプットする必要があり、著者の人間像や仕事への取り組み方や考え方を原稿や企画書で知り、必要であれば、ご本人へも直接いろいろな質問をしたりコミュニケーションを取るため仕事案件毎(納品するまでの期間だが)ひとりの個人、ひとつの仕事に結構詳しくなる。ただ出会うだけではないので、仕事の本質やお客様のご要望や意図を理解する能力も自然と習得してることが多い。だから、他の仕事と比較的して少し広めで深めの教養やノウハウが自分の知識として入るのです。そんなデザインの仕事だから、いろいろな人がおられました。

 22歳の頃、東京(曙橋)でデザイン事務所でバイトをさせて頂いていた頃でも、毎日、いろいろな人が事務所に訪ねてこられ、仕事案件毎に様々な情報を聞きいろいろ新しい経験や発見をさせていだいた。

 さて、そんなデザインの仕事現場でいろいろなエキスパートの方との出会いを繰り返していると、逆に私自身から能動的に「自分もこの仕事をやってみたい!」と感じることがあります。一般的にただお客様としてお店で料理を食べたり、ホテルでおもてなしを受けているだけでは気づかない仕事の裏側についてもいろいろ知る機会が多かったので、笑顔で対応しながらも実際のタフな仕事現場でたくさんのご苦労も見えてしまうが、その反面「やりがい」や「達成感」の大きさも見えるので、「やってみたい!」「実際、自分も経験してみたい!」と興味が生まれるのです。ただ、サービスを受けている立ち位置と、実際、現場で仕事に取り組むのとでは全く別物だということを分かった上で。

 今現在、個人的にある仕事に対してとても興味があります。とても心が惹かれています。しかし、実際、その場所で「さぁ、今から仕事です。始めましょう!」となった場合、自分自身がどこまで順応できて、ちゃんと仕事に取り組むためにはどのような準備が必要かを想像しながらその機会を得るためにどのように話を切り出そうかとワクワク・ドキドキしています。

 仕事って自分との相性もあるし、外側で見ているほど決して単純ではない。他人の仕事を無神経に否定することは絶対にできない。してはいけないと思っている。無知で無神経さを吐露したければそれが近道だが、当然、その言動は自分の価値や信用も低下さたり、極端な場合、軽率な一言で信頼がマイナスになる可能性もある。知らないこと知ったようなふるまいは絶対にやっていはいけない。仕事の現場では、簡単に目に見える、容易に頭に入れられる理論・情報の裏側に、数十倍~数百倍の厳しさや苦労がある。それを知らない気がついていない人間は絶対にデザインの仕事はできないのだ。そのことに気づきやっと入口に立てるのです。故に苦しく楽しいのです。