農業について。

 僕は今まで農業についてあまり真剣に考えたことがなかった。というのも、いろいろなデザインの仕事に取り組ませていただいたが、農家の方がクライアントであったケースがとても少ないかったのだ。
 東京時代には毎週数本の装丁デザインを担当させてもらっていた経験もあり、ほぼ完成状態の文字原稿をすべて読み、文字原稿から装丁デザインを着想するスキルを習得させていただいた。興味のあるなしに関係なく仕事だから必然であり、初めての分野に対する拒絶反応など持っての外。むしろ、この経験から自分が知らない分野の知識への興味が強くなり、原稿を惰性で読んでいたらデザインの着想も必然的に同期するので、無理矢理にでもやる気を奮い起こさねばならないのだ。頭と身体は正直なもので、やる気がデザインの品質を決める。「僕も人間だからやる気が出てこなければ、良いデザインなどつくれないですね!」などと子どものような発想は言語道断なのだ。だから、結構、いろいろな分野の浅い知識がある。当然、通常のグラフィックデザインやWEBデザインにおいても様々なクライアント様と仕事をさせていただけたので、チラシやポスターやパンフレット、そして、WEBサイトをつくる際にクライアント様の業務や商品に対して時間の許す限り探求しなければならない。よって、広く浅くになりがちなのだが、それでも他の仕事と比較してデザインの仕事は広く浅くいろいろな知識を得る機会が多かった。
 でも、農業の案件は極端に少ない。梅の農家様から商品に貼るラベルやパッケージ、そして、WEBサイトの依頼を受けた時や米農家様からカタログの制作を直接発注頂いたケースなどはあったが、農業に対する興味が、これも職業病だという言い訳になってしまうのだが、納品が完了すれば興味が消えるのだ。
 そんな中、先日、京大を卒業され東大で農業を研究している教授さんと知り合う機会があった。ご当地の野菜などの農産物を販売するECサイトの受注を頂いた流れで、クライアント様がその教授から農業経営の実態をリサーチした上でこれからの農業のあり方について助言頂くという意図があったのだ。そのお話を同席して拝聴しながら、改めて僕自身も農業について考えている。今からスイートコーンを生産することはできないが、農業という仕事についてその実態をリサーチして、農業とデザインの関連性を探求したいと考えている。
 現在、僕の手の中にどんな種があり、それをどのように栽培してどんな成果物が生まれるのかは未知だが、この手順が農業のノウハウとどことなく酷似している実感があるからなのだ。