どこでも、誰とでも。

 尾原和啓著「どこでも誰とでも働ける45の仕事術」という本がある。新聞広告で発見してちょっと気になっています。
 広告コピーには「どこでも通用する人間になりたいという思いに、グーグル、マッキンゼー、楽天からベンチャーまで12回の転職を重ねた著者が応える!」という力強い言葉が記されている。具体的に仕事のジャンルは広告には書かれていなかったので、この著者は「どんな仕事現場」でも対応可能なのだろう。逞しい方である。
 新時代、「AIに負けない働き方」や「どんな職場の会議でも活性化できる3つの方法」などとても魅力的な情報が論述・紹介されていそうな書籍なので、気分的にタイミングが合えば買うだろう。ただ、このタイプの情報は「どこでも誰とでも働きたい人」向けのようなので、著者は広く深い経験値からどんな仕事にも適用できる基礎知識やベーシックな対人能力を紹介しておられるのか?有名大企業12社での特殊な経験から独自の仕事術を開眼され、どんな仕事現場にも通用する方程式を発見されたのか?元来、マルチタスクの申し子なのか?想像推測しにくい。必ずしも「どこでも誰とでも」が幸福や裕福に繋がっているとは限らないし、実際、著者の経験値を具体的に紹介されている文章を読んだところで、次の日から「さぁ!僕もこの著者のように転職してキャリアアップだ!」とはなりにくいし、むしろ、仕事ってどこでも誰とでも働けるという最大公倍数的思考よりも、自身の思考力や行動力など知識やスキルを絞り込んでこそ達成感が上がるはず。こんな最大公約数的な解釈が理想だと僕は捉えている。少なくとも小さい新聞広告の紙面を見て読んで、こんな御託を並べられたわけだから、すでに書籍としての力があるのだ。
 僕は会社勤めは2社しか経験(7年間)がないので、「これが僕の仕事術です!」と披露できるような美しい定理・理論はない。あるのは24年の無数数多の失敗談と試行錯誤の歴史だだけ。これをキャリアと呼ぶには不完全で物足りない。未だに未完成状態の進行形渦中ど真ん中。だから、この書籍の美しい定理や著者の華やかなキャリアに嫉妬し、拒絶反応を起こしているというわけ。54年も生きてくるとちょっとやそっとでこの心の捻れを矯正できない。ゴニョゴニョ言って最後に保留する最悪の消費者なのだ。