企画書づくり

 仕事柄よく企画書を読む。勿論、企画書をつくることもデザインの仕事のひとつなので、仕事を始めてから長く企画書について試行錯誤を重ねてきた。大阪で広告代理店のクリエイティブ局の方と組んで企画の仕事をしていた頃は、ほぼ、1年中企画書のことを考えていた。いろいろな企業様から新規の依頼があった場合、長年、取引関係があるクライアントでも年間の広告計画を刷新したいと依頼があれば年間企画をつくるなどなど。また、新しい案件を獲得する目的や「おつきあい企画書」を制作も仕事(営業)のひとつだった。この企画書をつくるという仕事、なかなか慣れていないと取り掛かりが分からない。マンネリ化してもいけないのだが、ある程度企画書づくりには手順があり、資料や情報を整理しコンセプトワーク文をそれらしくした程度では仕事案件になる実現率が低い。当然であるが、案件を安定して確保・獲得するためにはそれ相当の内容・品質、そして、提出する際のプレゼンテーションの「間合い」が結果を左右するのだ。「企画書づくり」というキーワードで検索すれば、今でこそいろいろな手法やコツ・ヒントがヒットするが、20年以上前は完全アナログの世界で、実際の企画書づくりの内容もさることながら、冊子としての企画書を制作・製本してクライアントに提出できる状態にするにもかなり高いテクニックが必要だった。

 さて、では企画本体の部分だが、安易なアイディアや市場のニーズを考慮していない時代の潮流から逸れた企画書は言語道断としても、的を得るためには頭のコンディションを常に良い状態にしておかなければならない。ここが実は一番大変で苦労するのだ。とにかく、「企画書をいついつまでにください!」という連絡が突然やってくる。精通していない分野の企画であれば、基礎知識やその分野のセオリーや常識レベルの知識をすべて短期間で理解・消化しなければならない。この準備を怠るとアイディアは出てこない上に企画書本体の品質は上がらず、陳腐で安直な内容になってしまう。つまり、依頼・要望があってから時間の勝負と提出する間合い・タイミングが仕事の実現率を大きく左右するのだ。内容も当然、訴求力があり独自性があり時代性もなければならないし、荒唐無稽な仮定・仮説の連続では共感も信頼も得られない。まさに、デザインの仕事を展開するためには、「企画書づくり」はスルーできないのだ。

 当然、しっかりと企画書を制作する時間の余裕さえない場合も多く、「なんか良い企画ないですかねぇ?」と無茶振りされて「そうですね、また、考えてみますね。」では仕事は生まれない。その場その瞬間に相手の意図を瞬時に汲み取り、日頃から暖めて整理しているアイディアや企画のアウトライン案などを即座に返してこそ、信頼関係を築く糸口になるのだ。軽率に「なかなか、そんな都合のいい企画ってどこにもないですね。」などとは口が裂けても言葉にしないという強い覚悟と緊張感が必要なのだ。

 しかし、デザイナーやクリエイターにもいろいろなタイプいて、予算や原稿内容(主旨や仕様など)が確定した段階から仕事だと捉えているヒトはその前段にある「企画力」を習得できない。この意識がないと「デザイン」をオペレイト(作業)だと捉えてしまいがちなのだ。だから、「ブレインワーク」という観点がなく、当然、企画会議など成立しない。とは言え、企画会議にセオリーはないし、こうあるべきだなどいう正解もないのだが、「ブレインワーク」を言葉ではなく体感・実感で習得しているヒトとは会議に花が咲く。また、良い企画が良い仕事を生み出すとも限らず、「置き」の企画書が採用され、「攻め」の企画書が見事にスルーされる場合もあるから、具体的に何をどのようにどの程度習得すればいいのか理屈では全く分からない場合も多いのだ。だから、一辺倒に教えることもできないし、手順を説明することも難しい。これがデザインの仕事における「企画書」の実態なのである。