Adobe Creative Cloud

 「Creative Cloudは、PhotoshopやIllustratorといった定番アプリをはじめ、フォントなどのサービス、クラウドならではの機能を統合。初心者からプロまで、あらゆるクリエイティブ分野であなたのアイデアを叶えます。」このメッセージをクリエイターがどう捉えるか個人差はあるだろうが、僕は開発者からの挑戦状だと受け取った(解釈した)。そもそも、そういう意識を初めて感じたのはアドビのマスターコレクションという製品を知った時だ。それまでにもいろいろなデザインに関するソフトウエアを使ってきたが、主力は仕事上、「PhotoshopやIllustrator」だった。Illustratorについては英語版から使っているのでバージョン1.0以前から使っている。その頃のMACの画面はモノクロで最初に制作したオブジェクトは「禁煙マーク」だった。この経験を持っている人は意外と多いはず。仕事場でタバコを吸いながらIllustratorに格闘しながら「禁煙マーク」を制作するのは、なかなか貴重な体験だった。

 それから約30年、アドビがマクロメディアを吸収してデジタルデザインツールに関してほぼ「Adobe Creative Cloud」は完成形に近い。それは、まるで、「僕達はCCを開発したが、世界中のクリエイターの皆様、これを全部仕事に使えるかな?」という開発者の挑発なのだ。Adobe Creative Cloudを契約すると毎月¥5,000の使用料が永遠に必要で、年間¥60,000の費用である。ソフトウエアのパッケージを一つ買うと買取りだから月額費用とか年間費用は発生しないが、マイナーチェンジや細かいバグなどの対応はAdobe Creative Cloudと比較して緩い。そして、バージョンアップの際もアップグレード費用を都度支払ってVerを上げなければならない。デザイン会社はずっとこの仕組み・手順でソフトウエアを活用しているわけだが、そんな状況を一新したのが「Adobe Creative Cloud」なのだ。当然、費用分の利点は多いし、サポートも磐石なので必要なソフトのみを仕事で使う分には理想的だ。しかし、Adobe Creative Cloudを検討している人の多くが「そんなにたくさんの種類のソフトがあっても習得するのが大変だから、現状のパッケージ版を使います」という結論を出す。確かに使えないソフトに毎月費用をかけては成果は生まれない。さて、ほんとにそうか?では、なぜ、アドビの開発者達は「Adobe Creative Cloud」をつくったのか?そして、毎月¥5,000でこれほどのツールをユーザーに提供しているのか?について考察すると、この製品があれば「あらゆるクリエティブ分野」にあなたは挑戦できるのに、それをしないのは何故?と挑発しているように僕は受け取った。覚える時間がない、そのソフトを習得したところでどのように新規仕事案件を獲得するのか、そして、仕事案件を獲得したところで、充分な成果を生み出せるのかというネガティブな言い訳のチェーンリアクション(連鎖)が一般常識であり通念だろう。

 この観点ではいつまでもソフトウエアは手に馴染まないし、むしろ、世界のトップレベルの開発者達はいろいろな世界の状況を想定してクリエイターのためにこのツールをつくったのだから、その意気や意図を無視して、現状維持で満足することは自分自身で伸び代や可能性を放棄しているに過ぎない、と、僕は捉えている。

 小さいモノクロ画面でIllustrator英語版で「禁煙マーク」をつくっていた頃に感じた、開発者のユーモアあるメッセージを受け取った(解釈してしまった)以上、禁煙はしないし、「Adobe Creative Cloud」の狙いもしっかり自分の内側に実装したい。