美意識。

 某有名カメラマンの仕事に対する取り組み方姿勢のお話。多くのメジャーなアーティストの商業写真や化粧品メーカーの商業写真を手がけておられる男性の方である。その方が著名になるまでの経緯は決してライトだったわけじゃなく、何回も何百回もクリエティブディレクターに自分自身のポートフォリオ(作品集)を見せて好機を引き寄せられたのだ。写真作品は当然、基本的な知識からカメラのスペックを活用し、スタジオならライトの配置テクニック、ロケなら光の調整技術などは基本中の基本。その上でどこまで独自性のある良質な写真を撮影できるか、クライアントの期待や要望に対して、要件定義をどこまで達成するか、これがフォトグラファーの仕事。だから、デジタルカメラやスマホで撮影した一般の方の写真とフォトグラファーの写真に格差があるのは当然。しかし、不特定多数の一般の方が商業写真の場合ターゲットなのだから、ややこしく複雑な理論や方法論などの専門家のアプローチが背景にあったとしても、それをこと細かに説明する余地は存在しなので、一枚の写真にすべてを集約して実装させなければならいのです。

 そこでそのフォトグラファーの方は日本の「美意識」を徹底的に突き詰めようと、自ら華道に挑戦し、5年間修行をした後、師範代クラスの知識と技術と感覚を習得されたそうです。寺院や仏閣に自ら足を運び、日本の美意識をその感覚の中に刻んだ上で、写真撮影に取り組んでおられるのだそうです。この意識、正にプロ意識です。

 デザインやWEBや映像の仕事も同じだと思います。基本的なデザインの知識や専門機材やツール(ソフトウエア)の知識と技術。そして、あくなき好奇心と向学心で感覚を磨くことしか良質な仕事をする道は存在しない。近道はないのです。東京でお世話になったデザインの師匠のひとりからは「デザインバカになるな」という言葉を頂いた。デザインはただの手法だからその世界の知識や技術を習得することは決して無駄ではないが、良質な仕事を長く継続するためには、「デザイン以外の世界」を広く深く知ろうとする好奇心が大切だという意味でした。それは、知識・技術・感覚の先にある気質や人格や姿勢の部分で、デザインをエンジョイすることなんだと理解しています。

 ここでも、やはり、大きく強く作用するのは「美意識」なんです。