もう一つのデザインの仕事。

 デザインの仕事は正式にクライアントさんから受注できて本番が始まる。つくり手はその知識・技能・経験値や熱意・個性を総動員フル稼働して取り組む。いくら優れたつくり手だとしても、過去にどんな高い評価を得ていようが、ひとつひとつその仕事を成立できなければ、当然、代価は成立しない。しかし、本番の前にも、もう一つのデザインの仕事がある。デザイナー・クリエイターはこの仕事も疎かにしてはいけない。会社組織に属していた頃、「お金にならない仕事をするのはプロではない」と言われた。「プロならばどんな仕事もお金を貰わなければならない」と。僕はそのルール(ロジック・姿勢)が好きになれず、会社を辞めた。デザインの仕事(本番)を成立させるためのもう一つのデザインの仕事があるからだ。

 その時は若く、しっかり考えた上で行動することもできず、心の内を適正に言葉にすることもできず、単に組織のルールに縛れてデザインの仕事をすることにのみ、違和感があるのだと思っていた。ずっと、そのことを考えていてモヤモヤしながら、半信半疑、確証を得られない状況が続いていた。乱暴に「自分のルール」で仕事したいだけなのか?単に社長と上司と反りが合わないことの言い訳なのかと。でも、最近になってようやくその歪な意識が少しずつ整理できてきたような実感がある。それが、「もう一つのデザインの仕事」という捉え方・解釈ができるようになったのだ。まだ、しっかり整理はできていないので、こうしてブログに公開しながら、この意識を整理していこうと思っていますが、デザインの仕事を成立させるために私達つくり手は、本番よりも気合を入れてピリピリしながらやらなければならない仕事があるのだ。

 それは「ライフワーク」とか、「趣味の延長」とかでは当然なくて、しっかりとデザインの仕事につなげるための大切な仕事なのだ。それはコンサートで言えば、本番ステージに対してリハーサルのようなモノ。スポーツで言えば試合や記録会に向けて取り組む、日々の練習のようなモノだ。あまり「努力」「鍛錬」「修練」という言葉で表現したくはないが、いわゆるコンディションづくりのような意識・取り組みである。勿論、クラアイントさんに認知・共感・信頼してもらうためのプレゼンテーションアイテムを用意・準備することも含めて、常に弾丸を込めたライフルを構えて、いつでもトリガーを弾けるような状態にしておくことである。

 勿論、名刺や会社案内や自社サイトをしっかりつくり込んでおくとはマストとして、それ以上につくり手としての心構えや感覚の研磨や技能の鍛錬を常にベストコンディションに整えておくという仕事である。ただ、仕事として成立させるために全力を尽くして準備しても成立に届かないケースもあるし、自らが英断し本番に取り組むための条件や人間関係が築けていない場合はお断りしなければならないケースもある。勿論、予算との兼ね合いも。その判断を誤れば代価を得られても仕事は成立しないからである。

 そんな「デザインの仕事」に対するつくり手としての想いを少しずつこのブログで綴っていこうと思っています。