ウケるために。

 漫才コンビナイツの塙さんの本を読んでいます。この本は「M-1グランプリ」に関する、漫才に関する塙さんの分析であり、ご自身、本編で「言い訳」だと公言しておられます。

 舞台でウケるために、テレビ番組でウケるためにいろいろな試行錯誤をしてこられ、多くの漫才師のネタやステージパフォーマンスを分析しておられ、とても楽しく読んでいます。中でもいろいろな漫才師のネタについての分析が冷静・緻密で特に面白い。これも塙さんの人間性だと思います。

 結果、何が人の心を動かすのか?という部分につて塙さんは「人」だと言っておられます。いくら緻密で秀逸でテンポの良いネタを正確に実演しても、うねるような笑いは起きない。むしろ、どこかアドリブで演者の姿勢や本質が言動や表情に出せた時の笑いが最強だと言っておられます。ネタとは笑いを生むためのいわば手段のようなモノであり、人が共感し心を奪われる的は目の前の二人のパフォーマー達なのだと。このお話はデザインの仕事にも通じる部分が多く、「笑い」と「デザイン」は少し毛色が異なりますが、人の心を動かすという観点では同じです。デザインを評価してもらうためにクリエイターは寝ても醒めてもそのことを考えています。そして、新しいツール(PCやソフトウエアや機材など)を入手し、新しいテクニックを習得することばかりを考えています。これはある意味「狂気レベル」に近い。

 「一歩踏み出しませんか?」というフレーズでいろいろな習い事を紹介しているユーキャンなどで、ペン字や簿記や似顔絵などを誰でも始めやすくコンテンツ化しているビジネスモデルの仕組みを見かけるたびに、この仕組みでホンモノになった人は何%いるのだろう?と疑問を感じます。とても良いことで、出会うことはどんな分野のプロフェッショナルでも大切な機会なのですが、そもそも、何かに挑戦しようとする心情・心の内って「誰かより優れていたい!」「あいつには負けないぞ!」という密やかなモチベーションがあるはず。でも、誰でも始めれるポジションから何かを始めても、どんな分野のテクニックであれ、ステップアップするためには本人の努力・探求・決意・覚悟みたいなモノがマスト。だから、私は何かを始めたい、挑戦したいと決意したなら、誰にも知られずこっそり虎視眈々と始めるべきで、「ユーキャンで始めました」という保険は後々持続力を低下させる、向上心を奪う理由になりやすいような印象を受けました。「やるなら一人で!始めるなら今!」だと思うのです。何事も。

 ウケるのかウケないのかは暗中模索の結果として、まずは、狂ったように取り組めることを探すべきなのかなと思います。その姿勢が結果、誰の心に刺さるのだと。