つくり手の心得#003「型にはめない。」

 つくり手ならばデザインを構想する時、「型」にはめてはいけないと僕は考えている。

 若い頃、特に固執していた「自分のスタイル」という意識だ。ビギナーだからどうしても早く一人前になりたいと考える。今、56歳になって30年以上もデザインの仕事に従事してきたから一人前だとは当然、考えていないが、アナログ時代からデジタル時代、WEBサイトデザインから映像・動画制作などの仕事に携わってくるとそれぞれの段階で「自分のスタイル」つまり、「型」の有無や効果を意識してしまうことがある。

 それは、仕事を納品した瞬間に強く意識する。

「もう少し、あそこはこうだったかな?」
「クライアントさんはOKとおっしゃったが…」
「また、同じ失敗をしてしまったが、何とか納品できたぞ!」
 あの手順、この効率、その完成度、一様に仕事が完成して納品した瞬間、自分のスタイルらしき一片が一瞬、チラリと見えた気持ちになる。でも、次の瞬間、「まだまだ、これじゃない!」と気持ちが次の仕事に向け切り替わる。勿論、そこまで全力でデザイン制作に取り組んだからこそ、次のシーケンスが見えてくるのですが。さて、「これでひとつ自分の型ができたかな」とは意識して考えないできた。

 結果、デザインを「型(スタイル)」として捉える意識を消すことができて、現在に至っている。

 ひとつのスタイルで仕事を長年続けている友人やメジャーなクリエイターが「これば僕のスタイルですね」などと雑誌のインタビューなどでおしゃっておられるのを聞く読む度に、僕は思う。
「それはちょっとデザインじゃないのでは?」と。
 同じ思考、同じ手順、同じ行程でデザインを制作していたとしても、最初から「型」に流し込むだけなら、それはオペレーションじゃないかと。どんな状況でも仕事のスタートラインに立った時は新鮮な気持ちでいたいし、過去の失敗をいっぱい悔やみながら、今回こそは「新記録を出すぞ」と短距離走のようにピリピリしたのです。

 確かに満足感や達成感は残るものの、その余韻に浸るより、パチンとスイッチを切り替えて、次の思考にダイブしたいと思っています。過去の、世の中のクリエイターの皆様の「型」を知ることはとても重要なことですが、つくり手ならばコピーマシンになってはいけない。むしろ、変幻自在のアウトプットマシンを目指したい。それが良質なデザインに対する意識だと思っています。