つくり手の心得#005「資料探し」について。

 デザインの仕事はつくり手の知識・技能・経験値が売りなのですが、それだけでは多様な仕事を効率良く成立させることはできません。

 それは「資料」です。

 例えば、図鑑のリアルイラストレーションを描くという案件が発生した時はインターネットのなかった時代だったので、図鑑を探す、専門書を探す、そして、実際、描く実物が入手できるなら入手するか、写真撮影をする。実際、図鑑で同じモチーフが探せたとしても、専門家の見方はイラストレーションのクオリティーではなく、モチーフを徹底的に正確に描くことです。色や質感や構図は勿論のこと、どういう構造になっていて、それぞれの描くパーツの比率を指摘されます。思い込みや予備知識は全く参考にならないので、資料通りに描くという手順でした。

 今の時代、ネットで画像検索するば簡単にたくさんの写真が入手できます。20年前とは比較にならないぐらい恵まれた環境です。資料探しの時間効率はネットがなかった時と比較すると1/10ぐらいの感覚です。しかし、案件のモチーフが決まっている状況ならこれで資料探しは成立するのですが、ざっくりした提案型の企画案件の場合、どんな資料が適正なのを自分なりの知識と経験値から想定したアイディアをベースに資料を探す場合はネット時代だとしても苦労します。それは、資料を探す前段階である程度の「予想」「推測」をしなければなりません。この状況でまだ制作するデザインについて正解が見えていない状況ですから、広めの「予想」をしなければなりません。つまり、つくりたいデザインの参考になることが必須条件なのですが、参考になるだけでも足りないのです。

 構想している段階ではかなりイメージが大きいので、どの部分の資料なのか、もしくは新しいアイディアを得るためなのかを広く多めに探す必要があります。ここでポイントになるのが、検索キーワードの選択です。まだ、構想の段階で明確な言葉が選択できていない、曖昧なイメージがある段階ですから、当然、キーワードも手探りになります。その上、どれぐらいの量の資料を集めたら充分なのかも正解はありませんしマニュアルもありません。これはつくり手のテクニックでもあり、ひとつの仕事を完成させるためにとても大切な手順なのです。

 仕事の効率をより上げるために、イメージと言葉を連携・相関する日頃からの意識が大切ですし、時間があれば、どんな仕事に使えるか分からないが、とりあえずこのチラシは何気に良いのでもって帰ろうということの繰り返し、積み重ねが習慣となります。

 知識・技能・経験値と合わせて「資料」はほんとに大切です。