売れっ子。

「売れっ子」が売っているモノって一体、何だろう?

 恐らく「ネームバリュー」に関する何かで買い手に対していろいろなモノを与えているから
「売れっ子」が成立している。心底、羨ましいと感じる反面、恐らく想像できないようなプレッシャーやストレスがあるだろう。

 また、「売れない芸人」という人達は何が何故売れないのか?なんらかの才能があり決意と覚悟があるにも関わらず、売れないということは、「売れっ子」と比較して何かが足りないのだろう。この観点はデザインの仕事にとても深い関係があるように最近、感じている。

 そのきっかけは漫才コンビ「ナイツ」の塙さんの本を読み、プロの漫才師がM-1優勝を獲得したコンビを冷静に分析しながら、自己分析も正直に丁寧にされていたことに根がある。塙さんの分析を要約すると、そもそもM-1の決勝枠に選ばれるコンビというのはとてつもない努力を重ねた才能ある一部の天才達なのだが、それでも優勝できないコンビとできるコンビに分かれる。その要因はあの会場のギャラリーや審査委員の好みなども作用しているが、優勝するためには決定的な「勢い」があると。

 それは言葉の選択や互いの掛け合いやネタのトレンド(鮮度)、そして、互いの間合いのような微妙なニュアンスが必要で、二人の内側にあるあのステージを楽しむ姿勢のようなモノも含めこれらがすべて結合したコンビが1年に一組だけチャンピオンになれるのだと。その後、その二人は「超売れっ子」になるという流れだと分析しておられました。

 そこで、漫才やエンタメに限らず「売れっ子」とは、恐らく、M-1のように、「努力」「才能」「時代性」「姿勢や素質」が結実した人だけに与えられる称号なんだと思います。

 つまり「売れない」ということはどんなビジネスでも何かが足りないのであって、「売れたい」というただ強い根拠のない思考(自信)だけでは、自分自身をとりまく現実(環境)は変化しないのだ。現状を冷静に分析する視点・姿勢があれば、何が足りないのかが正確に判別できるのだろうが、「売れない人」というのは、いくら努力して才能に恵まれていても、この自己分析の段階で結論を先送りにしたり、行動を躊躇したり、理論理屈でのみ正解を出し、失敗やトラブルを警戒するあまりに動き、アウトプットが鈍化・停止するのだろう。

 とは言いながらも、闇雲にただ奇抜さや傲慢さだけを頼りに戦略を欠き、猛進していてもいつか前進は止まる。過去にどんな実績があろうとも、その瞬間その瞬間を冷静に分析しながら、ダイナミックに直進する推進力を常にキープすることが大切なのだろう。

 コロナの作用で思考と行動に強烈なブレーキをかけられた人は多い。しかし、自分の「売り」を見失っていない人はこの最悪の状況さえ巧みに凌ぎ、次の流れを自分に引き寄せるのだろう。「売れっ子」の人達はそんな「引力」というか、「発信力(動力)」というか、「素質(ポテンシャル)」を誰からも与えられることなく、自分自身で収穫・習得し、自分の中に実装させたのだろう。