湖畔にて。

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 この絵画は黒田清輝氏の「湖畔」。中学生の頃、美術の教科書で初めてこの絵を観て、とても印象的だった記憶がある。日本人が描いた絵でここまで強い印象が残った絵画は他にない。西洋時代の古典的な絵画やアメリカンアートからはたくさんのインスピレーションを頂戴したが、江戸時代の有名な画家や竹久夢二などと比べてもこの「湖畔」という一枚の絵は別格。とてもたくさんの感情・情動を想起させていただいた。この絵画のロケは箱根の芦ノ湖。一回だけ東京へ行く途中に寄ったがしばし心を奪われた。僕は長浜に住んでいるので毎日琵琶湖を観ているが、観る度に違う表情がある。恐らく、黒田清輝もこの女性を湖畔で描く構図をひらめき、描いている際、欲しい芦ノ湖の表情があったはず。モチーフの浴衣の女性の表情と湖面の表情のマッチングの瞬間を実際の現場で選択したのだろう。そういう瞬間っていったい画家の中にはどんな感情があったのだろう?その事をずっとずっと考え続けている。単に浴衣を纏った美しい女性を琵琶湖湖畔で描いただけではこの絵の情感は生まれないのだ。この湖畔と比較してワイエスの「クリスティーン」が頭の中に浮かぶことが多い。何故、画家は女性を描くのか?いつかその答が分かった時、僕は心の底から絵を描く技術を習得していたことに大きな価値や意味を感じるのだろう。