つくり手の心得#010「頼る」

 クリエイターやアーティストってどうしても「独自性」とか「個性」が先に立つ印象があると思うのですが、僕が知っている超有名な日本の重鎮と呼ばれているクリエイターさんとかアーティストさんって意外と普通なキャラです。学生時代にデザインや美術の専門書に登場していたような方でも、機会があり少しだけ対面でお話しすると、意外と印象は普通でした。作品はとても個性的で強い表現を試みている方でも。テレビで観たり書籍で読んだりした印象とは対極にあるキャラだったことが多いです。そうそう簡単に人間の本質が表に出るはずはないし、そういう方のエネルギーって分散しているんじゃなくて、一点にフォーカスしているからこそ強く優れていいるんだとその時は解釈していましたが、むしろ、独自性のある作品とつくったり個性的な発言や行動をアウトプットするために人間の本質は普通(ニュートラル)であることが理想なんじゃないかなと捉えています。

 で、「独自性」や「個性」という印象からか、常にひとりで考えて一人で行動して強い作品をつくっているような連想をしがちなんですが、実際はその方の相方というか影でサポートしているパートナーがとてもつなく優れている場合が多いです。それは、会社でいうところの社長と副社長とか専務という関係ではなく、漫才コンビのような関係です。で、自分のキャラをその相方がとことんまで引き出してくれているわけです。お互いがお互いのキャラを理解していてい理想的な化学反応の結果、成果として世の中に優れた作品をアウトプットしているような手順じゃないかと思います。

 昨今、インターネットや一般的なマーケットではマスを最優先します。とにかく分母を多めに獲得した上で、分子であるコンバージョン(成約・実益)の数量を上げていこうというシクミ。過去の成功事例から割合を算出して、これだけ稼ぐためにはこれだけの顧客層を確保して、これだけの顧客層を確保するためにはこれぐらいの予算でこのクラスのアウトプット(作品・成果)をつくる必要があるという理屈です。また、予算から逆引きして、過去のテンプレート(理論・方程式)から新規顧客数を算出して事業の成功の基準にするシクミ。これられは一見、的を得ているように思えますが、何かをアウトプットする時、本質的な賛同者、強い信頼関係にある存在って、実は一人で充分なんです。

 つまり、つくり手が必要な存在は「相方」と「理解者」のみで充分なのです。「相方」と「理解者」が同一人物でも複数でも必ずどこかの段階でストレスや必然性(プレッシャー)などの違和感が発生するので、つくり手を中心にそのエネルギーや思考が伝達する経路は2本でいいと思います。SNSの友達も同じで、10万人フォローがいても理解者が0だと確率は0/100,000=0%ですが、本質的な理解者がいれば伝導の確率は100%なんです。

 だから、自分を曝け出せる「相方」と「理解者」を必ずそれぞれひとりずつと出会うことを意識していると、本来、自分がやらなければならない行動や考えなければならない思考のルートが自然に見えてくると思います。

 その相方や理解者を見つけるコツは、思い切って相手の胸の中に顎の下に飛び込むこと。つまり、とことん頼ってみることじゃないかと思います。自分の弱さを露呈できる存在を見つけることこそが実は大切なことなのではないでしょうか。「独自性」「個性」だけを自分の内側に抱え込み駆け出しても、数歩で地雷を踏む場合が多いです。