歌が上手い人は耳がいい。

 「歌が上手い人は耳がいい」と言われています。この耳、勿論、メロディーやリズムをしっかり聴く耳であり、歌い手の感情や表現のディテールをしっかり聞き取る耳でもあります。そして、同じぐらい大切なのが自分の声をしっかり聴く耳でもあるのです。だから、音痴な人や歌が上手くない人は声の出し方や発声テクニックの前に耳のレベルアップが必要だという一般的なロジックです。

 一方、絵が上手い人は目がいいと僕は考えています。この目、勿論、形や色やディテールをしっかり見る目であり、世の中に存在する素敵な良質な絵をしっかりインプットする目です。そして、耳と同様に自分の描いた絵をしっかり見る目でもあるのです。だから、絵が下手な人は描くテクニックや配色のセンスなどに気を奪われて、自分の目のレベルアップを忘れている人だけなのかもしれません。

 同じことが味覚や嗅覚や触覚にも言えるのでしょうけれど、一般的に音楽や絵をアウトプットする状況と料理をつくったり嗅覚や触覚を使って何かをアウトプットすることは少ないので、自覚しにくい認識しにくいのかもしれません。

 で、最近、YTで素人さんが楽しそうにつくっている「音楽動画」を観るのが結構楽しくて、プロの音楽動画も素敵なんですが、同じ音楽でも素人・アマチュアがルールやセオリーを無視してノンプレッシャーで音楽を楽しんでいる動画に心を持っていかれています。例えば、保険か何かのCM映像でしわくちゃのおじいちゃんや若造やちょっと太った黒人女性が楽しそうに「STAND BY ME」を演奏して歌っているCM。あれは忘れられません。もしかしたら、皆様、プロなのかもしれませんが、一見、普通のおじいちゃん・若者・女性が、屋外で個々に楽器を演奏したり、棒キレを持って歌っている映像。クラシック音楽や日本古来の厳格厳粛な音楽もいいけど、僕は自由に少し調子が外れたぐらいの「STAND BY ME」の方が好きです。

 で、言わばこれもロングテールゾーンのニーズなのなかと捉えています。当然、素人レベルがどんな動画をつくってYTにアップロードしてもヘッドゾーンではないし、ある日いきなりチャンネル登録者が1000人になるってなんてことはない。仮になったらなったで広告費とか入ってきやって、YTからいろいろ注意されるんだろう。まして、人気が出て知名度が上がってしまったら、「楽しいだけ」じゃ済まない。お金が入ったり知名度が上がることは素晴らしいことだが、それでメンタルをやられたり底なし沼に沈むのは本末転倒。世界のネットユーザーがそう感じたから、ロングテールが伸びていくわけです。確かに人気が出て名前と顔が売れて個人資本がいくらになった!みたいなノリは羨ましい限りですが、それはそれで結果論。そもそもの楽しみ方のロジックは弱い、と思うのです。むしろ、「べき」「に違いない」「誰もがそう思っているだろう」的な制限の中で「楽しさ」という枷に翻弄されているだけのような気がします。そんな頭を捻って難しく考えるよりも、意外と身近に「楽しさ」はあるような気がしています。そちらの方がホントの「楽しみ方」のような。